これは『日本思想体系 蓮如・一向一揆』(笠原一男・井上鋭夫 校注 岩波書店 1972年)所収の「官知論」を現代語訳したものです。
『官知論』は、長享2(1488)年に加賀守護・冨樫政親が加賀一向一揆によって滅ぼされた、高尾城合戦について記したものです。
それほど長くないわりに、加賀一向一揆序盤のハイライトとも言うべき、高尾城合戦について詳細に書かれています。
ただ軍記物の常として、誇張の他、史実と矛盾する箇所も散見されるので、ご注意下さい。
例えば高尾城の描写では、いかにも険阻な深山の趣にしていますけれど、実際は確かに北加賀の平野を見渡せるものの、それほど高い山ではないですし、言うほど険阻でもありません。
また、日付等も他史料と前後していたりして、注意が必要です。
なお、文中の人名等は、下記のように底本使用のものをできるだけ使用しています。
例 冨樫→富樫 山川三河守→山河三河守
刊行本(日本思想体系本)は漢字カナ交じり文で、補注もしっかりしていますので、興味のある方は、そちらをご参照下さい。
官知論 序
1 富樫殿が近江征伐に従軍すること
2 富樫政親が加賀一向一揆を退治する計略のこと
3 高尾山に城郭を構えること
4 一揆の者どもが政親に詫びること、また、家老山河三河守が政親を諌めること
5 一揆の者どもが要害を構えること、また、仏法の怨敵の物語のこと
6 一向一揆の諸軍勢が布陣すること
7 一揆の者どもの軍議のこと
8 越中の援軍が一揆に破られること
9 高尾城額口合戦のこと
10 富樫政親の奥方が城を出て京都に赴くこと(上)
11 富樫政親の奥方が城を出て京都に赴くこと(下)
12 富樫政親の奥方が出家し受戒すること 及び注釈
13 槻橋近江守のこと
14 八屋藤左衛門のこと
15 山河三河守を高尾城から抜け落ちさせること
16 高尾城落城のこと、また富樫政親の自害のこと
17 越前口の合戦の様子を知らせてくること
官知論 跋文